カンナビノイド受容体って何?作用秩序や効果を解説(パート1)

「カンナビノイド受容体って何?」

「カンナビノイド受容体ってどんな役割があるの?」

「CBDってなんで効くの?」

 今回の記事はCBDを摂取する上で絶対に覚えておきたい受容体について、その概要から効果までを分かりやすく解説します。

特に「CBDって本当に効くの?」と疑問を抱いている方は、理論がわかればスッキリするはず!

ぜひ参考にしてみてください!

【カンナビノイド受容体って何?作用秩序や効果を解説(パート1)】

【①カンナビノイド受容体とは】

⑴受容体は薬(鍵)に対する鍵穴

⑵カンナビノイド受容体は人体で最も多い受容体

⑶2つのカンナビノイド受容体

【②カンナビノイド受容体への作用による効果】

⑴CB1受容体活性と精神作用の関わり

⑵CB1受容体活性と食欲の調整機能の関わり

⑶CB1受容体活性と鎮痛作用の関わり

①カンナビノイド受容体とは

⑴受容体は薬(鍵)に対する鍵穴

 受容体(レセプター)とは各細胞の表面や内部にあるタンパク質分子のことです。この受容体が特定の物質(薬やホルモン、神経・情報伝達物質(※1)と結合することで、体に生理活性をもたらします。この特定の物質が鍵だとすると、受容体はそれに対する鍵穴であると例えられます。

 例えば、インスリンという薬が効くのはインスリン受容体と結合するからであり、清涼感をもたらすメンソールに対してもメンソール受容体というものがあります。基本的に、各物質に対してそれ専用の受容体が存在します。

 1988年、セントルイス大学の研究者がカンナビノイド(THC)に結合するカンナビノイド受容体(CB1受容体)を発見しました。これは、「私たちの体にカンナビノイドという成分を利用するための機能(受容体)が存在する」という大発見であり、後の内因性カンナビノイドやECSの発見にもつながりました。

内因性カンナビノイドとECSについては、過去のブログを参考にしてみてください。

【ECSって何?体への影響やCBDとの相性など解説】

⑵カンナビノイド受容体は人体の中で最も多い受容体

 受容体は1000種類ほどあると言われていますが、驚くべきことに、カンナビノイド受容体は他のどの受容体よりも数が多いと言われています。特に、脳には痛みの反応を制御するCB1受容体がu受容体(モルヒネの鎮痛作用に関連)の約10倍多く存在すると言われています。カンナビノイド受容体が人体の至るところに存在していることは、CBD商品の摂取方法に幅広い選択肢(経口・肺・皮下吸収など)を与えることにもつながっています。

CBDの摂取方法については、過去のブログを参考にしてみてください。

【直接?食事に入れる?CBDを摂取する方法は?CBDオイルの摂取方法を紹介】

 ちなみに、CB1受容体は我々人間だけでなく脊椎を持つ全ての動物の体内にも存在します。

(※1) リガンド

⑶2つのカンナビノイド受容体

 現在、カンナビノイド受容体は2種類あることが分かっています。1つ目が「CB1受容体」、2つ目が「CB2受容体」です。「この2つの受容体は、痛み・炎症・食欲・消化器官・運動・睡眠サイクル・免疫細胞とホルモン・気分を変容させる神経伝達物質(※2)の放出などを調整します。」

 CB1受容体は主に脳の中枢神経系シナプス(神経細胞間の結合部)や、感覚神経の末端部分に存在しており、CB2受容体は免疫系の細胞、内臓などに存在しています。

 よく、THCがなぜ精神作用をもたらすのかという質問を受けます。それは、THCが神経系に存在するCB1受容体に対して強く作用するからです。ちなみに、このCB1受容体は、呼吸器を調整する脳幹には存在しません。なので、THCが直接的な原因となって⼼臓や肺を停⽌させることは考えにくいとされています。一般的に、大麻の致死量は500kg以上の消費(30分未満)と考えられていますが、いずれにせよ、日本ではTHCを含有する製品や植物の所持・栽培が規制されています。

CB1受容体の分布

中枢神経系、脳(最も多い)、リンパ、精巣、輸精管、子宮、心臓、血管、消化管、膵臓、骨、骨髄、肝臓、小腸、眼球、皮膚など

CB2受容体の分布

免疫細胞、脳、リンパ、生殖器官、心臓、血管、消化管、腎臓、腸管、秘蔵、肝臓、骨、骨髄、眼球など

(※2) セロトニン、ドーパミン、グルタミン酸塩など

【②カンナビノイド受容体への作用による効果】

⑴CB1受容体活性と精神作用の関わり

 1988年に発見された最初のカンナビノイド受容体です。CB1受容体は、主に脳や脊髄などの中枢神経系(神経細胞間の結合部)や、感覚神経の末端部分に存在しています。THCや内因性カンナビノイド(※3)は、このCB1受容体に直接結合することによって精神作用(主に気分の高揚)を引き起こすと考えられています。

 「CB1受容体が担う重要な役割は、神経伝達物質の放出を調整すること」です。CB1受容体は報酬系回路と呼ばれる神経系に深く関わっており、それが植物性・内因性カンナビノイドによって活性化されると、ドーパミンやセロトニン、GABAを生成するグルタミン酸などの伝達に影響を与えて快楽を感じます。

 さらに興味深いのは、2つの内因性カンナビノイドがそれぞれに役割を担っていることです。アナンダミドは恐怖を司る脳の部位、扁桃体を介して恐怖記憶を忘れることを助け、一方の2–AGは、中脳辺縁系の報酬経路からより多くのドーパミンを放出させることを助けます。PTSD(心的外傷後ストレス障害)患者が抱える恐怖記憶の消去に対して、大麻が有効であると考えられているのはこのためです。

 なお、体内でTHCはアナンダミドを模範とし、CBDは2–AGを模範する形で働くと言われています。

 報酬系神経伝達物質は人間の体内で生成される物質として「脳内麻薬」などと表現されたりしますが、植物性カンナビノイドやアルコール、ニコチン、モルヒネなどの物質は、外部摂取による刺激で報酬系に影響を与えています。

 ちなみに、強く結合はしないものの、CBNはCB1受容体と結合するカンナビノイドとして知られています。

CBNについては、過去のブログを参考にしてみてください。

【CBNとは?CBDとの違いや効果を解説】

⑵CB1受容体活性と食欲の調整機能の関わり

 この「CB1受容体は精神作用をもたらすだけではなく、食欲や痛みの感覚にも影響します」

CB1受容体との結合によって起こる生理作用

気分の高揚(報酬系の制御)

記憶・認知(苦痛や嫌悪に関わる記憶の消去)

痛みの感覚(鎮痛)

食欲の調節

運動機能の制御

睡眠

脂肪代謝など。

 脳の1番奥に存在する視床下部は、食欲、睡眠、体温、体の水分量や塩分量の調整をしています。 さらに、近くの海馬と連携して記憶や意識の調整もしているとも言われている非常に大事な部分です。CB1受容体はこの視床下部に存在し、食欲と代謝に大きな役割を果たしています。ラットを使った動物実験で、中脳辺縁系および視床下部へCB1 受容体に作用する物質を注入したところ、食欲増進作用が見られたことが明らかになっています。さらに、内因性カンナビノイドは絶食時に増加し、摂食時では減少するということが判明しており、視床下部を中心とする食欲のコントロールには内因性カンナビノイドが関与していると言われています。

 もう1つは、食欲抑制物質であるレプチンが関与しています。レプチンは視床下部での内在性カンナビノイド濃度を減少させますが、反対に、レプチンが欠損しているラットでは視床下部での内在性カンナビノイド濃度は増加していることが分かっています。これらの研究から、CB1受容体の活性が食欲増進をもたらし、逆に不活性化が食欲の減少をもたらすということが分かります。体内のレプチンの量が減ると内因性カンナビノイドが増加し、食欲の増進につながる可能性があるという研究はとても興味深いですよね。

 その他にも、嗅球にも存在するCB1受容体の活性化が、匂いの感知を増強し食欲増進を導くのではないか?また、内因性カンナビノイドが味覚嫌悪記憶の消去に関わることから、食べ物の好き嫌いがなくなるのではないか?など、カンナビノイドと食に関する有益な研究が今も続けられています。カンナビノイド受容体が関わる食物摂取行動の変化は、肥満や拒食症に対しての有力な薬理的指標として大きな可能性を秘めています。 

 大麻を摂取したことによる食欲の増加は、一般的に「マンチ」と言われているそうですが、それにはCB1受容体が大きく関わっていると言えます。
(※3) アナンダミド、2-AG

⑶CB1受容体活性と鎮痛作用の関わり

 前述で「CB1受容体が担う重要な役割は、神経伝達物質の放出を調整すること」。と紹介しました。CB1受容体は、ドーパミンやセロトニン、GABAを生成するグルタミン酸などの神経伝達物質に影響を及ぼし精神作用をもたらしますが、疼痛調節がもたらされるのも同じような仕組みです。

 カンナビノイド受容体の活性化は、末梢での侵害受容性疼痛に限らず、神経因性疼痛や心因性疼痛にも効果が認められています。紀元前から、大麻は鎮痛作用のある植物として、儀式や医療目的で使用されてきたという歴史があります。ここではまず、CB1受容体が持つ鎮痛効果をご紹介します。CB1受容体が痛みの緩和効果を発揮する主な部位は、痛みの「本部」がある中脳と言われており、この伝達経路に作用することで痛みをやわらげます。

 現在、CB1受容体がもたらす疼痛効果について根拠が高いものは以下となります。

術後疼痛・浮腫(カラゲニン誘発炎症反応)

熱刺激による疼痛反応

多発性硬化症の痙縮、および痛み

がん性疼痛

カプサイシン誘発性の炎症性疼痛

 研究では、内因性カンナビノイドであるアナンダミドを脊髄内および脳室内に投与することによって「術後疼痛・浮腫(カラゲニン誘発炎症反応)」の緩和作用が認められています。基本的に、アナンダミドはCB1受容体と結合することで鎮痛・痛みの緩和をもたらすと考えられていますが、「熱刺激による疼痛反応」については、アナンダミドとCB1受容体の結合によってもたらされるものではなく、アナンダミドそれ自体の鎮痛作用、又は他の受容体との作用によって起因している可能性があります。(バニロイドVR1受容体など)それは同研究によって、CB1受容体が欠損したマウスでもアナンダミドの鎮痛作用は出現するということが明らかになったためです。

 内因性カンナビノイドと植物性カンナビノイドは違う物質として考えた方が良いですが、THCはCB1受容体に結合するという点でアナンダミドを模範する形で働くと言われています。また、CBDは体内のアナンダミドの蓄積を助けると考えられています。鎮痛作用を持つアナンダミドは「FAAH」と呼ばれる酵素によって分解されることが分かっており、CBDがそのFAAHを抑制することで内因性カンナビノイドの分泌量を増加させ、間接的にCB1受容体を活性化させる=鎮痛作用をもたらすと考えられていました。それは、FAAH が欠損したマウスは脳内アナンダミド量が正常マウスに比べて 15倍も高く、体内の組織損傷に対して痛みのハードルも高い事が明らかになったためです。しかし、その後の研究で、CBDは脂肪酸結合タンパク質(FABP)の働きを阻害することによってアナンダミドを蓄積させ、そのことがCB1受容体の活性化につながっているのではないかということが発見されました。FAAHは細胞内に存在しているものであり、FABPは内因性カンナビノイドを運ぶトランスポーターの役割を果たすことでその細胞内に内因性カンナビノイドを再取り込みするからです。

 「多発性硬化症の痙縮及び、その痛み」については、THC を主成分とする口腔内スプレー剤ナビキシモルスの有用性が認められ、カナダや一部の欧州諸国で実際に処方されています。同薬剤は、「がん性疼痛」にも痛みの緩和効果があるものとしてアメリカで臨床試験が進んでいます。

 以上のように、CB1受容体活性と痛みの関係性については日本でも海外でも盛んに研究が行われており、研究者の間でも議論が分かれていることがあります。ナビキシモルスのように、臨床試験を経てその効果が承認された薬剤もありますが、ほとんどの研究はまだ動物実験でのエビデンスになります。それには法律的な部分も関係しており、ヒトでの積極的な研究が進められていないことが考えられます。

少し長くなってしまったので、CB2受容体からは「カンナビノイド受容体って何?(パート2)」をご覧ください。

【カンナビノイド受容体って何?作用秩序や効果を解説(パート2)】